9月19日(土)~21日(月)の小学生を対象とした漁村宿泊体験モニターツアー
「まるごと体験!海の宝物~祝津の海で学ぶ命のつながり」が行われました。
参加したのは高学年を中心とする小学生31人。小樽市内や札幌をはじめ、函館から参加してくれた兄弟もいました。2泊3日、めいっぱい海で遊び、海で学んだ子どもたちの様子をお伝えします。
9月19日
水の大切さを知る
19日午前10時過ぎ、海辺の情報サロンには次々と大きなリュックをかついだ子どもたちが集まってきました。一人のキャンセルもありません。兄弟姉妹やお友達と参加した子もいますが、一人で参加する子も多く、少し緊張した様子が見られます。
スタッフは小樽うみ元気プロジェクトのメンバー4人。担任の先生の役割を果たすのは委員長の
森井秀明さん。プログラム担当は大塚英治さんと二杉寿志さん。記録係兼雑用は私、野谷悦子です。祝津で地域振興に取り組む「祝津たなげ会」のメンバーや漁師さんも協力してくれました。
さらに、子どもたちのグループリーダーとして北野台中学で先生をしている久保田将樹さん、
東海大学生の斉藤郷さん、斉藤荘平さん、田淵廉さん、中原夏野さんが参加しました。
森井さんからの挨拶、スタッフ紹介の後は、お互いに知り合い親しみを持つための
「アイスブレイク」です。二杉さんがスタッフや参加したみんながお互いに親しくなるためのゲームをしました。 手遊びでリラックスした後、二杉さんが取り出したのはペットボトル。中には1ℓの水が入っています。
「これが地球の水全部だとしたら、飲める水はどのくらい?」という投げかけに各グループで相談が始まりました。二杉さんの説明によると、975mlは海水、残り25mlのうち氷ではなく水としてあるのは7.5ml、このうち飲める水は1滴ほどです。因みに、10年前までは今よりも氷が多かったので、
海水以外の水は30mlだったそうです。
次に取り出したのは4本の瓶。中にはどれも無色透明な水が入っています。
「この中に1本だけ真水があります。どれでしょう?」最初は目で見て、ふってみて、匂いを嗅いで、五感を使って考えます。グループの中でもいろいろな意見が出ている様子。
種明かしをすると、真水以外にアルコール、サイダー、海水がありました。
アイスブレイクが終わったころには、みんなの緊張もほぐれ、グループリーダーたちとも打ち解けた印象です。笑顔や会話も増えていました。
観光船で祝津へ
昼食を食べた後、サロンを出発した一行が向かったのは運河。
「運河って何だろうね。運河も実は海なんだけれど、どういう海なんだろう。
どうしてここに運河ができたんだろう。そんなことを考えながら歩いてみよう」。
二杉さんのこんな呼びかけに、子どもたちはグループで話し合いながら運河散策をしました。
対岸の石造りの建物を見てみると「倉庫」の文字があちこちに。
「きっと荷物を運んできて、ここに入れたんだね」。
そんな意見が聞こえてきます。運河沿いで自作の絵ハガキやグッズを販売している人たちや
人力車の人に小樽運河の歴史についてヒアリングしている姿も見られました。
終着点は観光船乗り場。ここから船に乗って祝津に向かいます。
祝津に行ったことがある子は多いのですが、船で行くのはほとんどがはじめてだと思います
(私も)。デッキに出ると、いつもの小樽の街が違ったアングルで眺められます。
街の広がりや山が迫っていること、天然の良港であることがひと目で分かります。
到着した祝津港は大きな小樽港とは異なり、小さな漁港です。漁船がたくさん並んでいます。
民宿まで歩いて行く途中には魚網や浮き玉など漁に使う道具があり、シャコの網を掃除しているおばさんもいました。
ウニやヒトデを見つけて喜ぶ子もいます。

観光船で祝津到着
カニ釣り大会で盛り上がる
民宿「しおさい」が今夜の宿です。荷物を置き、ひと休みしたら、
短パンに着替えて目の前の海へ。海での最初のプログラムは磯の生物観察です。
一気にテンションが上がる子どもたち。短パンでひざくらいまで海につかる予定でしたが、
中には海に飛び込んでしまう子も。
体が冷えないように途中で着替えに宿に戻る一幕もありました。
班ごとに分かれ、箱めがねを使ってカニやヒトデ、ウミウシなどさまざまな生き物を見つけ、
水槽に入れて観察しました。
水の中をのぞいてみると、たくさんの多様な生き物がそこで暮らしていることが分かります。
大塚さんから「ヒトデの手は5本、ウニの殻を見てみるとやはり5つに分かれているね。
ウニとヒトデは同じ仲間なんだよ」と説明があります。
後半は班対抗カニ釣り大会。針金の先に餌のイカをつけ、
制限時間内で捕獲したカニの数や大きさを競います。
各班とも、釣れそうなポイントを探し、釣り方も工夫していました。
餌を入れてみるとわらわらとカニが出てきて、岩の隙間にはとてもたくさんのカニが隠れていることが分かりました。「隠れる場所が必要なんだね」と二杉さん。
最後にお互いの釣果を披露。一番大きなカニ、一番小さなカニ、一番たくさん獲ったチームを
競い合ったあとは、カニたちを海に返してあげました。

盛り上がったカニ釣り
漁師さんのお話を聞く
カニ釣りの後、漁港に行くと、ホタテ漁師の中村さんと小樽水族館の渡部さんが待っていました。
祝津ではホタテの養殖を行っています。中村さんはさまざまな漁具や機械を見せながら説明しました。
ホタテは5月に生まれ、1年で5㎝に成長し、2年で食べられること。祝津では海を漂っている
赤ちゃんのホタテを籠で捕獲して育てていること。ホタテは20段もある籠に入っていて、
大きくなるにつれて目の大きな籠に入れ替えていくこと。
ホタテの多くはある程度大きくなると道内のほかの海に出荷して大きく育てること。
みんなの食べているホタテは、いろいろな手間を経て食卓に上っているんだね。
渡部さんは実際にホタテを手に取り、表と裏があって色が違うことを教えてくれました。
砂の上にいる時に目立たないよう茶色い方が表です。
また、ホタテの「ひも」の部分には眼点と言われる目のような組織があることや、
天敵のヒトデに襲われると貝殻を口のようにパクパクさせて泳いで逃げることもできるそうです。
渡部さんのお話で生き物としてのホタテについても知ることができました。
その後、カニ漁師の長谷川さんに籠で獲ったヒラツメガニも見せてもらいました。
鍋や汁にするとおいしいカニだそうです。
祝津の海ではいろいろな魚介類が水揚げされているんですね。
秋サケをさばく
夕食の前、先ほどの漁師の中村さんが宿にやって来て、獲れたての秋サケをさばいてくれました。ズバッと包丁を入れると血が流れ、一瞬目を背ける子もいましたが、
ほとんどの子どもたちは興味しんしんでその様子を見ていました。
こうして一匹まんまの魚をさばくと、私たちの食がほかの命に支えられていることが実感できます。
「いただきます」という言葉はほかの命をいただくという意味なんでよ、というお話もありました。
秋サケの腹の中からに出てきたのはきれいなオレンジ色のイクラです。
みんなでイクラをほぐす体験もしました。
明日の朝ごはんにはこのイクラを食べることになっており、期待がふくらみます。
夕食は今日見てきたホタテや秋サケ、ヒラツメガニを肉や野菜と一緒にバーベキューにして
食べました。地元の祝津の子どもたちも飛び入り参加し、子ども同士、話が弾んでいたようです。
夕食後には夜の海に散歩に出かけました。昼間カニ釣りをした場所ですが、
ずいぶん様子は違っています。
暗い分、風や波の音が感じられ、遠くの街の明かりもきれいです。
宿に戻ってからは班ごとに分かれ、リーダーを中心に今日一日の振り返りをして就寝となりました。
9月20日
早朝の散歩でにしん番屋を見学
翌朝は6時起床。といっても、5時過ぎから目を覚ましている子もいます。
秋サケやホタテの水揚げを見学する予定でしたが、
残念ながら海が時化て漁が中止になってしまいました。でも天気はいいので、
祝津のまちを大塚さんの案内で散歩することになりました。
祝津は道内でも早くに拓けた漁業のまちです。観光施設のにしん御殿有名ですが、
そのほかにもまちを歩いてみるとあちこちに歴史的建造物が残されています。
江戸時代に建てられた神社や明治時代のにしん番屋、石蔵、
網元の家などはかつての栄華が感じられる立派な建物ばかり。
中には改装されて今はレストランとして活用されている番屋もありました。
そのような古い建物に子どもたちが興味を持ってくれるか、私たちは少し心配でしたが、
想像以上に子どもたちが楽しんでいた様子です。この次は祝津の歴史やこれらの
建物の由来や建築様式についてガイドを入れて解説してもいいと感じました。
お散歩の最後に今日プログラムを実施する浜に寄り、ビーチコーミングをしました。
ゴミもたくさんあったけれど、きれいな貝殻や魚の骨もあり、生き物の気配が感じられます。
きれいなビーチガラスを集める女の子、
ハングル文字のペットボトルを見つけた男の子もいました。
ライフセービングとスノーケリングを体験
朝食後はウエットスーツ、マリンブーツ、足ひれと水中メガネを持って浜へ。
まずライフセービングを体験します。
先生を務める森井さんは北海道のライフセーバーの草分け的な人。ライフセーバーはどんなことをするか、海で安全に過ごすためのポイントなどを解説し、実際に海に入ってみました。
9月の海は思っていたより暖かく、ウエットスーツを着ているので寒くありません。水をかけ合ったりと、みんなの楽しそうな声が響きます。実際にライフセービングに使うニッパーボードを使った
リレーでは、白熱したレースを展開しました。
昼食は海水鍋。海水に事前にみんなで用意しておいた野菜や肉を入れ、煮たものです。
海水の程よい塩分がおいしい! 体も温まりました。
午後は足ひれや水中メガネを付けてスノーケリングをします。大塚さんの指導で器材の使い方や泳ぎ方、立ち方を学んだ後は、実際に生き物を探してみました。ウニ、魚、
カニなどいろいろな生き物を見つけていた様子。
中にはスタッフと一緒に背が立たない深さまで行って
「最初はちょっと怖かったけど気持ち良かった」と話してくれた子もいました。
約2時間のスノーケリング、寒くなって陸に上がり焚き火に当たっている子もいましたが、
最後まで参加した子も多かったです。上がった子の中には箱メガネを使って生き物観察をしている姿も見られました。
この日、海は時化ていましたが、祝津には漁港の陰に風を受けにくい浜があり、
プログラムを実施できました。
このような浜があることは、プログラムを実施する上でとても有難いと感じました。
シーフードカレー作り
シャワーを浴びた後は、今日の宿、天狗山のおこばち山荘に移動しました。
夕食は祝津のホタテを使ったシーフードカレーです。担当を決め、ホタテを殻からはずす
グループ、火を起こすグループ、カレーを作るグループに分かれて調理です。
このころには子どもたちとリーダーの連携もとれ、お互いに協力し合い、
指示を出しあったりして共同炊事に取り組んでいました。
ルゥがそれぞれ違うので、できあがったカレーは班ごとに微妙に味が異なります。
ほかの班のカレーと食べ比べるなどして40合炊いたごはんをすべて食べ切り、
カレーも完食しました。みんなで作ったカレーはおしいしね!
食後はこれまでの振り返りとして海の宝物について、海はだれのものか、
生き物はどんなところに棲んでいたかなどを話し合いました。
それらを表現した壁新聞の制作にも取り掛かりました。みんなはもっとやりたい雰囲気でしたが、疲れているし、明日もプログラムがいっぱいなので今日はこれまで。
それぞれのテントに分かれて就寝となりました。
9月21日
天狗山で海を眺めながらプログラム
最終日、起床は6時半です。後片付けをしたら荷物を持って天狗山に移動。
ここで朝食を食べます。眼下に小樽の街と海が見渡せる絶景のポイント。
昨日までプログラムをしていた祝津も見えます。海に向かって「小樽、サイコー!」
「小樽、大好き!」と叫ぶ子も何人かいて、スタッフとしてはジーンとくる瞬間でした。
食後は二杉さんが食べるものと食べられるもの、隠れ家や餌を提供する自然環境について楽しく学べるゲームを実施。「生き物はみんなほかの生き物の役に立っている。
地球も生き物にいろいろなものを与えてくれているね。
そんなことを考えながら水族館を見てみよう」と締めくくり、最後のプログラム、
小樽水族館に向かいました。
課題に沿って水族館で生き物観察
水族館に着くと、館長さんが出迎えてくれました。「今、特別展『森は海でできている』を開催中です。豊かな森は豊かな海につながっているし、豊かな海は豊かな森につながっています。
自然はみんな、つながっています。今回の皆さんのテーマと水族館のテーマは同じですね」
とご挨拶がありました。
水族館では班別の行動です。与えられた課題(元気な生き物は? 守ってあげたい生き物は? おいしそうな生き物は? など9つある)に沿って生き物を観察し、探します。時間はたっぷりあるので、イルカなどのショータイムも楽しみながら、じっくり水槽を観察している様子が伺えました。
いつも家族と訪れる水族館とはちょっと違った楽しみ方、学び方ができのではないでしょうか。
課題が終了した班は、昼食の前の時間を利用して最後の振り返りやまとめに熱心に取り組んでいました。
昼食を食べたら、いよいよ最後のプログラム、海辺の情報サロンに戻ってみんなの体験発表です。お迎えに来ているご両親も見ている前で、一人ひとりが学んだこと、感じたことを発表し、
お互いの体験を共有しました。磯の生物観察、スノーケリング、ライフセービングなど楽しかった
思い出を語ってくれた子もいましたし、「山や海は命をつなぐひものようなものだと思う」
「海は人間だけでなくたくさんの生き物が利用している。大切にしなくては」など、学んだことを
提案してくれた子もいました。

水族館で記念撮影
海の魅力、祝津の魅力
子どもたちに海の楽しさを知ってもらい、海からいろいろなことを学んでもらいたいと
企画した今回のモニターツアー。私たちスタッフも試行錯誤でしたが、
ケガなや事故もなく終了してほっとしています。
初日、はじめて会って戸惑いがちだった子どもたちが、最後のサロンではお別れを惜しむほどに仲良くなってくれたこと、とりわけ班の結束が高まったことが嬉しかったです。
海は危険、行ってはいけないと言われることが多いと思いますが、海の楽しさを知らない子どもたちが増えていくのは寂しいことです。
今回のように指導者が付き安全を確保した上での体験を通して「海っていいな」「また海に遊びに行きたい」と感じてもらいたいと思います。
また、私たちももっと幅広く海の魅力を伝えられるようにプログラム開発を進めたいと感じました。
今回のプログラムは小樽市の祝津地区を中心に行いました。
祝津は小樽の街からほど近い場所にありながら漁村の暮らしを体験でき、水族館もあるすばらしい場所です。
歴史的な建物もあり、宿のすぐ目の前の海でプログラムが実施できるし、
海が多少時化ても大丈夫な浜があるのも好都合でした。
これからはより地元の方々との連携を進め、祝津ならではの体験を作り上げていきたいと思います。